概要
N:={1,2,}\mathbb{N} := \{ 1, 2, \cdots\} を自然数全体の集合とする. 正の奇数全体の間の写像を
Col:2N12N1,n3n+12m\rm{Col}: 2\mathbb{N} - 1 \to 2\mathbb{N} - 1, \displaystyle n \mapsto \frac{3n + 1}{2^m}
と定義し, コラッツ写像と呼ぶ. ただし, mm 3n+13n + 1 を割る最大の 22 のべきとする. コラッツ写像を kk 回適用した値を Colk(n)\rm{Col}\displaystyle^k(n) とする. 簡単に表すために ak:=Colk(n)a_k := \rm{Col}\displaystyle^k(n) とおき,
(a1,a2,)(a_1, a_2, \cdots)
をコラッツ数列と呼ぶことにする. また nn を初期値と呼ぶことにする. 例えば, 初期値 n=3n = 3 の場合,
(5,1,1,)(5, 1, 1,\cdots)
となる.
Colmin(n):=min{Colk(n)kN}\rm{Col_{min}}\displaystyle(n) := \min\{ \rm{Col}\displaystyle^k(n) \mid k\in \mathbb{N} \}
とする. 任意の nNn\in \mathbb{N} に対して Colmin(n)=1\rm{Col_{min}}\displaystyle(n) = 1 が成り立つ, というのがコラッツ予想である.
数列が一致する初期値のペア
奇数 a0, b0 (1a0<b0)a_0,\ b_0\ (1 \le a_0 \lt b_0) を初期値とする数列を (a1, a2, ), (b1, b2, )(a_1,\ a_2,\ \cdots),\ (b_1,\ b_2,\ \cdots) とする. このとき, b0=4a0+1b_0 = 4a_0 + 1 ならば, a1=b1a_1 = b_1 である.

証明

a1=3a0+12m1a_1 = \displaystyle \frac{3a_0 + 1}{2^{m_1}}, b1=3b0+12n1b_1 = \displaystyle \frac{3b_0 + 1}{2^{n_1}} とする. ただし, m1m_1 3a0+13a_0 + 1 を割り切る最大のべき, n1n_13b0+13b_0 + 1 を割り切る最大のべきである.
b1=4(3a0+1)2n1=2m1+2a12n1b_1 = \displaystyle \frac{4(3a_0 + 1)}{2^{n_1}} = \frac{2^{{m_1} + 2} a_1}{2^{n_1}}
であり, 2a1, 2b12 \nmid a_1,\ 2\nmid b_1 であるから,
a1=b1, n1=m1+2a_1 = b_1,\ n_1 = m_1 + 2
となる.
コラッツ数列の一般項
Sk:=2m0+m1++mk, m0:=0S_k := \displaystyle 2^{m_0 + m_1 + \cdots + m_k},\ m_0 := 0 とする. このとき, 奇数の初期値 a0a_0 のコラッツ数列 (a1,a2,)(a_1, a_2, \cdots) の第 nn 項は
an=3na0+i=0n1(3iSn1i)Sna_n = \displaystyle \frac{3^n a_0 + \displaystyle \sum_{i = 0}^{n - 1}\left(3^i S_{n-1-i}\right)}{S_n}

証明

n=1n = 1 のとき
a1=3a0+12m1a_1 = \displaystyle \frac{3 a_0 + 1}{2^{m_1}}
であるから成り立つ.
nn のとき成り立つと仮定すると
an+1=3an+12mn+1=3n+1a0+i=0n1(3i+1Sn1i)+Sn2mn+1Sn=3n+1a0+i=0n(3iSni)Sn+1 \begin{equation} \begin{split} \nonumber a_{n + 1} &= \displaystyle \frac{3 a_n + 1}{2^{m_{n + 1}}} \\ &= \displaystyle \frac{3^{n + 1} a_0 + \displaystyle \sum_{i = 0}^{n - 1} \left(3^{i + 1}S_{n - 1 - i} \right) + S_n}{2^{m_{n + 1}}S_n} \\ &= \displaystyle \frac{3^{n + 1} a_0 + \displaystyle \sum_{i = 0}^{n}\left(3^i S_{n-i}\right)}{S_{n + 1}} \end{split} \end{equation}
となるから n+1n + 1 のときも成り立つ.
初期値に戻るような数列を持つ初期値 (n = 1, 2)
a0=a1a_0 = a_1 となるような初期値 a0a_0a0=1a_0 = 1 のみである. また, a0=a2a_0 = a_2 となるような初期値 a0a_0a0=1a_0 = 1 のみである.

証明

  • a0=a1a_0 = a_1 の場合
a0=12m11a_0 = \displaystyle \frac{1}{2^{m_1} - 1}
であるから a0=1a_0 = 1 (m1=1)(m_1 = 1) のみである.
  • a0=a2a_0 = a_2 の場合
a0=2m1+32m1+m232a_0 = \displaystyle \frac{2^{m_1} + 3}{2^{m_1 + m_2} - 3^2}
である. (m1, m2)=(2, 2)(m_1,\ m_2) = (2,\ 2) のとき a0=1a_0 = 1 である. そこで a02a_0 \ge 2 と仮定して矛盾を導く. このとき
2m2+11+212m1<122^{m_2 + 1} \le 1 + \displaystyle \frac{21}{2^{m_1}} \lt 12
より
m22\begin{equation} m_2 \le 2 \end{equation}
である. また
42m2+11+212m14 \le 2^{m_2 + 1} \le 1 + \displaystyle \frac{21}{2^{m_1}}
より
m12\begin{equation} m_1 \le 2 \end{equation}
である. さらに 2m1+m2321\displaystyle 2^{m_1 + m_2} - 3^2 \ge 1 より
4m1+m2\begin{equation} 4 \le m_1 + m_2 \end{equation}
である. (1),(2),(3)(1), (2), (3) より (m1, m2)=(2, 2)(m_1,\ m_2) = (2,\ 2) である. しかしこれは a02a_0 \ge 2 に矛盾する. したがって a0<2a_0 \lt 2 である.
初期値に戻るような数列を持つ初期値 (n = 3)
a0=a3a_0 = a_3 となるような初期値 a0a_0a0=1a_0 = 1 のみである.

証明

a0=a3a_0 = a_3 とすると
a3=33a0+2m1+m2+32m1+322m1+m2+m3a_3 = \displaystyle \frac{3^3 a_0 + 2^{m_1 + m_2} + 3\cdot 2^{m_1} + 3^2}{2^{m_1 + m_2 + m_3}}
より
a0=2m1+m2+32m1+322m1+m2+m333a_0 = \displaystyle \frac{2^{m_1 + m_2} + 3\cdot 2^{m_1} + 3^2}{2^{m_1 + m_2 + m_3} - 3^3}
である. (m1, m2, m3)=(2, 2, 2)(m_1,\ m_2,\ m_3) = (2,\ 2,\ 2) のとき a0=1a_0 = 1 である. a02a_0 \ge 2 と仮定して矛盾を導く. 2m1+m2+m33312^{m_1 + m_2 + m_3} - 3^3 \ge 1 より
m1+m2+m35\begin{equation} m_1 + m_2 + m_3 \ge 5 \tag{1} \end{equation}
である. a02a_0 \ge 2 より
2m3+11+32m2+632m1+m2<192^{m_3 + 1} \le 1 + \displaystyle \frac{3}{2^{m_2}} + \frac{63}{2^{m_1 + m_2}} \lt 19
となるから
m33\begin{equation} m_3 \le 3 \tag{2} \end{equation}
である.
m3=1m_3 = 1 の場合
112m2+212m1+m21 \le \displaystyle \frac{1}{2^{m_2}} + \frac{21}{2^{m_1 + m_2}}
より
2m1(2m21)21\begin{equation} 2^{m_1}(2^{m_2} - 1) \le 21 \tag{3} \end{equation}
となる.
m3=2m_3 = 2 の場合
2<12m2+212m1+m22 \lt \displaystyle \frac{1}{2^{m_2}} + \frac{21}{2^{m_1 + m_2}}
より
2m1(2m2+11)21\begin{equation} 2^{m_1}(2^{m_2 + 1} - 1) \le 21 \tag{4} \end{equation}
となる.
m3=3m_3 = 3 の場合
512m2+212m1+m25 \le \displaystyle \frac{1}{2^{m_2}} + \frac{21}{2^{m_1 + m_2}}
より
2m1(52m21)21\begin{equation} 2^{m_1}(5\cdot 2^{m_2} - 1) \le 21 \tag{5} \end{equation}
となる. (1)(5)(1)~(5) を満たす組み合わせは以下のようになり, a0Za_0 \in \mathbb{Z} に矛盾する.
m1m_1m2m_2m3m_3a0a_0
113311315\displaystyle \frac{31}{5}
222211375\displaystyle \frac{37}{5}
331111495\displaystyle \frac{49}{5}
112222235\displaystyle \frac{23}{5}
221122295\displaystyle \frac{29}{5}
111133195\displaystyle \frac{19}{5}
初期値が平方数の場合の第一項
初期値 a0=k2 (k>1, 2k)a_0 = k^2\ (k > 1,\ 2 \nmid k) に対して a1<a0a_1 < a_0 である.

証明

k=2l+1 (l1)k = 2l + 1\ (l \ge 1) とすると,
a1=3(4l2+4l+1)+12m1=4(3l2+3l+1)2m1=3l(l+1)+12m12 \begin{equation} \begin{split} \nonumber a_1 &= \displaystyle \frac{3(4l^2 + 4l + 1) + 1}{2^{m_1}} \\ &= \displaystyle \frac{4(3l^2 + 3l + 1)}{2^{m_1}} \\ &= \displaystyle \frac{3l(l + 1) + 1}{2^{m_1 - 2}} \end{split} \end{equation}
この分子は奇数であるから
m1=2, a1=3l(l+1)+1m_1 = 2,\ a_1 = 3l(l + 1) + 1
となる. したがって a1<a0a_1 \lt a_0 である.

注記

これは次の「初期値が 4k+14k + 1 型の場合の第一項」の特別な場合である.
初期値が 4k + 1 型の場合の第一項
初期値 a0=4k+1a_0 = 4k + 1 に対して a1<a0a_1 < a_0 である.

証明

a1=3a0+12m1=3k+12m12 \begin{equation} \begin{split} \nonumber a_1 &= \displaystyle \frac{3a_0 + 1}{2^{m_1}} \\ &= \displaystyle \frac{3k + 1}{2^{m_1 - 2}} \end{split} \end{equation}
であるから a1<a0a_1 \lt a_0 である.

注記

kk が偶数の場合, 3k+13k + 1 は奇数であるから
m1=2, a1=3k+1m_1 = 2,\ a_1 = 3k + 1
となる.
初期値が 4k + 3 型の場合の第一項
初期値 a0=4k+3a_0 = 4k + 3 に対して a1>a0a_1 > a_0 である.

証明

a1=3a0+12m1=6k+52m11 \begin{equation} \begin{split} \nonumber a_1 &= \displaystyle \frac{3a_0 + 1}{2^{m_1}} \\ &= \displaystyle \frac{6k + 5}{2^{m_1 - 1}} \end{split} \end{equation}
であり, この分子は奇数であるから m1=1m_1 = 1 となり, a1=6k+5>a0a_1 = 6k + 5 \gt a_0.
コラッツ予想と自然数の表し方
aNa \in \mathbb{N} を奇数とする. このとき次は同値である:
(1)(1) Colmin(a)=1.\rm{Col_{min}}(a) = 1.
(2)(2) ある nNn \in \mathbb{N} と自然数の組 (l1,l2,,ln)(l_1, l_2, \cdots, l_n) が存在して
a=2l1++ln3ni=1n2l1+li13i\begin{equation} \displaystyle a = \frac{2^{l_1 + \cdots + l_n}}{3^n} - \sum_{i = 1}^n \frac{2^{l_1 + \cdots l_{i - 1}}}{3^i} \tag{*} \end{equation}
となる.

証明

(1)    (2)(1) \implies (2)
an=1    3na+i=0n13iSn1i=Sn    a=Sni=0n13iSn1i3n    a=Sn3ni=1nSi13i \begin{equation} \begin{split} \nonumber a_n = 1 &\iff \displaystyle 3^n a + \sum_{i=0}^{n - 1} 3^i S_{n - 1 - i} = S_n \\ &\iff \displaystyle a = \frac{S_n - \displaystyle \sum_{i=0}^{n - 1} 3^i S_{n - 1 - i}}{3^n} \\ &\iff \displaystyle a = \frac{S_n}{3^n} - \sum_{i = 1}^n \frac{S_{i - 1}}{3^i} \end{split} \end{equation}
よりしたがう.
(2)    (1)(2) \implies (1)
a0:=a, ak:=3ak1+12lk, Tk:=2l1+lka_0:= a,\ a_k:=\displaystyle \frac{3a_{k - 1} + 1}{2^{l_k}},\ T_k:= \displaystyle 2^{l_1 + \cdots l_k} とおくと, ()(*)
a=Tn3ni=0nTi13ia = \displaystyle \frac{T_n}{3^n} - \sum_{i = 0}^n \frac{T_{i - 1}}{3^i}
となるため, (    )(\implies) の式変形により an=1a_n = 1 となる. 各 lkl_k 3ak1+13a_{k - 1} + 1 を割る最大の 22 べきであることを示す. まず, akN (1kn)a_k\in \mathbb{N}\ (1 \le k \le n) であることを示す. そうでないと仮定する. arNa_r\notin \mathbb{N} となるような最小の 1rn1 \le r \le n をとる. このとき,
ar=u2t, 2u, t,uNa_r = \displaystyle \frac{u}{2^t},\ 2\nmid u,\ t, u \in \mathbb{N}
と表せる. このとき
ar+1=3ar+12lr+1=3u+2t2lr+1+tNa_{r + 1} = \displaystyle \frac{3a_r + 1}{2^{l_{r + 1}}} = \frac{3u + 2^t}{2^{l_{r + 1} + t}} \notin \mathbb{N}
となる. これを繰り返すとすべての rjnr\le j \le n に対して ajNa_j\notin \mathbb{N} となるが, これは an=1a_n = 1 に矛盾する. よってすべての 1kn1\le k \le n に対して akNa_k \in \mathbb{N} である.
次に 2ar2 \mid a_r なる 1rn1 \le r \le n が存在すると仮定すると ar+1=3ar+12lr+1Na_{r + 1} = \displaystyle \frac{3a_r + 1}{2^{l_{r + 1}}}\notin \mathbb{N}となり矛盾. よってすべての ak (1kn)a_k\ (1 \le k \le n) は奇数であるから, 各 2lk2^{l_k} 3ak1+13a_{k - 1} + 1 を割る最大の 22 べきである. これはコラッツ操作にほかならない.

  • a=3a = 3
コラッツ数列は (5,1)(5, 1) より n=2n = 2, 22 べき数列は (1,4)(1, 4) であるから
3=2532(2031+2132)3 = \displaystyle \frac{2^{5}}{3^2} - \left( \frac{2^0}{3^1} + \frac{2^1}{3^2} \right)
  • a=5a = 5
コラッツ数列は (1)(1) より n=1n = 1, 22 べき数列は (4)(4) より
5=243120315 = \displaystyle \frac{2^4}{3^1} - \frac{2^0}{3^1}
  • a=7a = 7
コラッツ数列は (11,17,13,5,1)(11, 17, 13, 5, 1) より n=5n = 5, 22 べき数列は (1,1,2,3,4)(1, 1, 2, 3, 4) より
7=21135(2031+2132+2233+2434+2735)7 = \displaystyle \frac{2^{11}}{3^5} - \left( \frac{2^0}{3^1} + \frac{2^1}{3^2} + \frac{2^2}{3^3} + \frac{2^4}{3^4} + \frac{2^7}{3^5} \right)

注記

Cn:={2l1++ln3ni=1n2l1+li13ilk1(1kn),l0=0}\displaystyle C_n := \left\{ \frac{2^{l_1 + \cdots + l_n}}{3^n} - \sum_{i = 1}^n \frac{2^{l_1 + \cdots l_{i - 1}}}{3^i} \mid l_k \ge 1(1\le k\le n), l_0 = 0 \right\}
とおくと,
N n=1Cn\displaystyle \mathbb{N} \subset \ \bigcup_{n = 1}^\infty C_n
を示さなくてはならない. C1={2m13mN}\displaystyle C_1 = \left\{ \frac{2^m - 1}{3} \mid m \in \mathbb{N} \right\} であり, C1C_1 に含まれる自然数全体を考えると mm は偶数になるので {1,5,21,85,341,}\{1, 5, 21, 85, 341,\cdots\} となる. このように C1C_1 では隙間が大きすぎるが, すべての CnC_n を合わせることで N\mathbb{N} を覆うことができるだろうか.